シリーズ 睡眠について その7 不眠症の2
2015-09-24


神経症性の不眠症とうつ病性の不眠症を見分けるポイントの一つは、夜中に起きてしまったときの行動です。神経症性の人は、夜中に起きてしまって眠れなくなってしまったことに対して焦り、ひどい場合には普通に寝ているのんきな家族に対して怒りを覚えることがあります。
 一方で、うつ病性の場合は、自分が夜中に起きてしまったら、普通に寝ている家族を起こさないように、そっと寝室を離れてひとり静かに夜空を見上げるようなタイプの人です。

 神経症の不眠症は、患者本人の睡眠中の映像を見せて実際には眠れていることを理解してもらったり、必要な睡眠時間にこだわらないように考え方を変えてもらうなど、精神的な治療でほとんどが治ってしまいます。
 うつ病性の場合は、中枢神経機能がバランスを崩していることが原因なので、薬による治療が必要になります。いわゆる睡眠薬や精神安定剤を投与して睡眠をうながす方法もありますが、うつ病の薬も併用します。不眠症そのものは病気ではなく、うつが引き起こす症状の一つに過ぎません。根本の原因であるうつ病を治療すれば、不眠症も自然に治ることになります。
 うつ病性の患者に対しては、厳しい態度で接することは厳禁です。また決して「がんばって」などと励ましてはいけません。周囲は良かれと思ってやったとしても、本人にとっては、「自分は十分にがんばっているのに、これ以上どうやってがんばるんだ」と逆に精神的負担を与えてしまい、最悪の場合は追い詰められて自殺を図るケースがあるからです。

◎ こんな人は不眠症予備軍

 眠りに入るのに時間がかかるといった不眠の症状がない人の中にも、不眠症予備軍とも言える人たちがいます。「いつでもどこでも、好きな時に眠れること」を自分の特技として自慢する人がいますが、実はこのような人は不眠症予備軍の代表です。環境が変わっても、時間が昼間であってもすぐに眠りに入れる人というのは、実は単なる睡眠不足が原因なのです。寝つきが良ければ良いほど、睡眠不足の程度が深刻であると言うことができます。

 適切な睡眠を確保している健康な人は、昼間に寝てくださいと言われても寝られるものではありません。覚醒と睡眠の正常なサイクルで一日を過ごしている人は、日中は脳が活発に覚醒していますから、いくら部屋を暗くされて横になったとしても、眠れるはずがないのです。
 ところが睡眠不足が続いている人や不眠に悩む人は、寝てもいいですよと言われると、イスに座ったままでもあっという間に眠ってしまいます。これは決して自分で睡眠をコントロールしているからできる特技などではなく、重度の睡眠不足のために、体が必然的に眠りを必要としている証拠なのです。
 こうした人たちは正常な睡眠サイクルがすっかり乱れてしまっていますから、すぐにでも不眠の症状が出てきても不思議ではありません。自分では認識することはなくても、不眠症予備軍の筆頭に位置づけることができます。どこでも寝られる「特技」を自慢してる場合ではないのです。
 予備軍から本格的な不眠症に「格上げ」になることを避けるには、睡眠時間を増やすとともに、規則正しい生活パターンを取り戻して理想的な睡眠サイクルを手に入れることが何よりも大切です。
 健康的な眠りを十分にとれている人は、夜ベッドや布団に入ってから眠りに落ちるまでに10分〜15分かかるのが正常です。自分はおそらく5分とたたないうちに眠ってしまっていると思う人は、睡眠不足が蓄積していると考えていいでしょう。

◎ 不眠の相談は、どんな病院へ行くべきか

 自分は不眠症ではないか、と思ったときには、ひとりで悩んでいても仕方がありません。思い切って専門家に相談してプロの意見を聞けば、精神的な整理ができて安心できます。

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