シリーズ 睡眠について その6 不眠症の1
2015-09-18


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◎ 不眠症は病気ではない

 不眠の悩みを抱えている人は、日本人の5人に1人と言われています。24時間活動型の都市部を中心に生活時間帯はどんどん遅くなり、睡眠時間は削られる一方です。現代ほど不眠に悩まされている人が多い時代は、人類史上かつてありませんでした。
 睡眠不足が何日も続くと、熟睡感を得ることができず、疲労も回復しないので、日中に強烈な眠気に襲われます。こうした状態になると、日中の仕事の作業効率や判断力が著しく低下し、ミスや事故の原因となります。さらには、高血圧、心筋梗塞、肥満、糖尿病などの他の病気を引き起こす原因にもなってしまいます。

 不眠症という言葉は広く世間に認知されていますが、実は「○○という状態を不眠症と呼ぶ」といった統一した正式な医学的基準があるわけではありません。一般的指標として、寝つきが悪い状態や夜中に目が覚めるなどして眠りが持続しない状態が1ヶ月以上続いた場合などには、不眠症であると言っていいでしょう。
 ほとんどの人は不眠症は病気の名前だと考えているようですが、不眠症は病気ではありません。一般に、不眠症は「心身の疲労などにより、十分に眠れない状態が続く病的状態」と定義されています。不眠症とは、何らかの原因によってよく眠れないことを悩んでいる状態、つまり「症状」を指す言葉であり、決して病名ではありません。

 「症状であって病名ではない」の他の例として、頭痛があります。頭痛そのものは病気ではなく、何らかの他の病気(脳腫瘍など)や過労などの他の体調不良が表面に出てきているに過ぎません。不眠症もこれとまったく同じで、人それぞれ眠れない原因が異なります。職場のストレス、近所の工事の騒音、将来への不安感など、実にさまざまです。よって、不眠症を解消するためにはまず不眠の原因を特定し、適切な対処をする必要があるのです。

◎ 不眠症の人は実際は眠っている

 不眠症に悩み、「一睡もできないんです」と医師に相談する人の多くは、実際は、自分でも気付かないうちに数時間は眠っていることが多いのが実情です。ただ、自分では寝たという意識や記憶がないだけなのです。
 ここに睡眠不足に悩んでいるAさんとBさんがいます。ふたりのうち、不眠症でより大きな苦痛を感じているのはどちらでしょうか。
Aさん:昨日4時間しか眠れなかった。自分が4時間眠ったと認識している。
Bさん:昨日は一睡もできなかったと信じている。(実際は4時間眠っている)
 実際の睡眠時間は同じですから、二人とも肉体的負担は同じはずです。しかし、Bさんのほうが明らかにげっそりしています。
 なぜこうした違いが出てくるのでしょうか。これは、ひとえにBさんの気持ちの持ち方が原因です。自分は眠っていないと信じ込んでしまい、そのために本当は眠っているのに、自分は一睡もしていないと信じてしまっています。人の心と身体は一心同体です。「病は気から」と言われるように、人間の身体は気持ちの持ちようで、良いほうにも悪いほうにも変化します。実際はしっかり眠っていて肉体も健康のはずなのに、「自分は眠れていない」と心が信じてしまうと、肉体的にもいろいろな異常が出てきてしまうのです。
 つまり、実際に物理的に眠ったかどうかよりも、本人が「眠ったと感じる」ことができることのほうが大切なのです。

 不眠症の人は、実際はよく眠っています。それを家族や医師に指摘されるとムキになって否定する傾向があります。自分はこんなに不眠症で悩んでいるんだから、実際には眠っているなんてウソだ、と絶対に認めたくないのです。そうした気持ちが、実際は十分に眠っているのに自分はずっと寝ていないという精神的な寝不足とも言うべき精神状態となり、自分は不眠だとより強く思い込むようになります。

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