過労死 防止学会設立記念大会
2015-06-24


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5月23日、明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーの12階1123教室で、「過労死 防止学会設立記念大会」が盛大に開かれました。

 これは、昨年の過労死等防止対策推進法(過労死防止法)の成立・施行を受け、過労死の実態と防止対策についての調査研究をメインに行う民間団体として、過労死遺族や研究者、弁護士、労働安全衛生の活動家、ジャーナリストなど幅広い人々によって結成されたものです。
 総会では、代表幹事に森岡孝二さん(関西大学名誉教授)、事務局長に櫻井純理さん(立命館大学産業社会学部教授)が就任されました。

 設立記念シンポジウムは、川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)と笠木映里さん(九州大学法学部準教授)の司会で始められました。
 最初に「来賓?」として、厚労省の過労死防止対策室長?が挨拶し、「まもなく過労死防止対策推進大綱ができあがる(5月25日にできました)が、国として過労死に関する調査研究の蓄積がないため、まず労災事例で医学的分析を始めようと考えている」という、いささか頼りないものでした。

 次に、報告者は、@寺西笑子さん(全国過労死家族の会代表)「過労死のない社会の実現をめざす遺族の願いと防止法の課題」、A熊沢 誠さん(甲南大学名誉教授)「過労死・過労自殺の要因とこれからの課題」、B加藤 敏さん(自治医科大学精神医学教室教授)「ここ最近の日本における企業情勢と職場のメンタルヘルス」の3人でした。

 寺西さんは、夫を過労自殺で亡くしたご自身の体験をもとに、夫の真相解明に10年9か月かかったことや、1991年に結成された「過労死を考える家族の会」での活動から、「被災者は中高年から若年層へ過労死が拡大。大黒柱の人生が奪われ、罪もないその子供が二次被害にあっている現実を変えなければならない」と力説されました。
 熊沢先生は、聞いてて非常に難解でしたが、過労死・過労自死の重層的な要因や、欧米と異なる日本の特徴としてふつうのノンエリート労働者の働きすぎがあること。特に非正規労働者は生計のため長時間労働になりやすく、非正規の比率が上がることは、正規労働者へのムチ(イヤなら辞めろ=非正規化)に使われていること。過労死・過労自殺の根因は労働者の「自発的な主体意識」でないのは当然ではあれ、死に歪るまでの働かせすぎを受容してきた労働観を顧みる必要性はあると。
 加藤先生は「職場結合性の精神疾患にはうつ病と双極性(U型)がある。どちらも自殺企図が高い。アルコール依存も増えている。職場結合性のうつ病は抑制型(定型)よりもパニック発作から不安・焦燥型が多く見られる。東北震災の影響によるものも見られるようになった。うつ・軽躁ともに長時間労働が背景にあることは確か」と。

 次に、
@ノース・スコットさん(大阪大学人間科学研究科教授)
A岸 玲子さん(北海道大学環境健康科学研究教育センター特任教授)
B西谷 敏さん(大阪市立大学名誉教授)
C東海林 智さん(毎日新聞記者)
が、各10分程度のコメント。
 スコット先生は「ホワイトカラーイグゼンプション(WCE)は、グループ労働の多い日本では悪用されかねない。」
 岸先生は「日本学術会議の“労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会提言”」を紹介された。[URL]
 西谷先生は「推進法の文中には労働時間、36条協定、労働組合の文字が全くない。WCEや裁量労働制の見直しは長時間労働を是認するもので、推進法と矛盾する。まるで“働かせ続けてドクターストップ!”みたいなもの。8時間労働制の原点に返って、36条協定の上限規制を実現すべき」と、これも力説されました。
 東海林記者は「ブラック企業の公表は就業機会の選択資料であり、社会的な監視にもつながる。WCEは20代中頃から適用される可能性があり、裁量労働の拡大とともに、労働時間の把握が困難となる」と。


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